還暦のお祝い

還暦はもともと長寿をお祝う行事でした。しかし現在では60歳は長寿というよりも人生の通過点のひとつと考える方がほとんどです。 還暦のお祝いに対する考えが変化してきたなか、どのようなマナーなのか、どのようなものを贈るべきか悩む方もいらっしゃるでしょう。 この記事ではもともとの還暦の祝いの内容やその由来、風習を説明すると同時に、現在の還暦ではどのようにお祝いをしているのか、どのような贈り物をしているのかということについて解説していきます。

目次

1. そもそも還暦とはどのようなお祝いなのか?

還暦というのは「暦が還る」つまり、カレンダーが一周するという意味です。 昔から東アジアに伝わる暦の中には十二支十干というものがあります。今でも詳細が書かれているカレンダーのなかに「ひのえとら」「かのとひつじ」などと書かれているものがあります。これが十干十二支です。 その十干十二支というものは60で一周します。実は日付だけでなく、月や年などにもこうした十干十二支がつけられているのです。この年に付けられた十干十二支が一周することを還暦と言います。 そのため、満60歳のお祝いを還暦と呼んでお祝いをするのです。

2. 還暦の祝いにはどのようなものを贈っていたのか

還暦の祝いには古くから赤いものを贈るのが風習とされていました。現在ではそうした風習というのは少しずつ薄れつつあるため、それぞれの家で何か記念となるものを贈ったり、また物ではなく食事や旅行などを贈ったりすることも多くなってきました。
共通して言えるのは、60年というこれまでの長い人生に対するねぎらいとして子どもなどが何かを贈るということです。

2-1. 還暦で赤い物を贈る理由

日本では赤という色はさまざまな意味合いがあります。
自然のもののなかで赤いものといえば、血、太陽、火などがあります。これらのものはわたしたちの生活の中で欠かせないもの、そして生命の根源的なものの色です。また赤のイメージとして生命力やエネルギーなどもあります。

また太陽や火などは暖かさを与えてくれるものでもあり、またさまざまなものを消毒してくれるものでもあります。こうしたことから日本では古くから赤という色は魔を祓う色として扱われました。
たとえば神道を由来とするものの多くは赤や朱色を基調にしているものが多くあります。鳥居、巫女装束の緋袴、幼少期に宗教儀礼でおでこに朱をさすなど、魔を祓う色として赤が利用されているのを多くの場所で見ることができます。
そのため、古くからの習慣として、生まれたばかりの子どもに赤い物を着させるという習慣があったのです。

還暦で赤い物を贈るのは暦が戻ってきたことから赤ん坊と同じように赤い物を身に付けるという習慣と魔を祓ってこれからも長く健康で生きてほしいという願いが込められていると言われています。

また赤という色は宗教的ではなく生物学的に人間を活性化させる効果があるとされています。諸説様々ですが、赤という色は血の色であるため人間を興奮させる色です。活力を与え気持ちを前向きにさせる効果がカラーセラピーとしてあると言われています。還暦の祝いで赤いものを贈るのはそうした活力を持ってこれからも元気でいてほしいという思いがこもっているからかもしれません。

2-2. 赤いちゃんちゃんこを贈られるのが嫌だという方も

還暦の祝いをしてくれるのは嬉しいけれど、赤いちゃんちゃんこが嫌だという方も少なからずいるようです。その理由としては以下のようなものがあります。

  1. 色が似あわないから
  2. 歳をとった気持ちになるから
  3. その場でしか使わないからもったいない
など

昔は今と比べて寿命が短く、また少し前までは60歳で定年であったため、60歳になると仕事を引退して老後の生活を送るというのが通例でした。しかし、最近では「人生100年時代」と言われています。60歳で引退ということはなく、80や90になっても元気に活動されている方も多くいらっしゃいます。現在では60歳はただの年齢的な区切りであり、ただの通過点であると考える方が多くいらっしゃるのです。そこまで生きてきたことをお祝いされるような年齢ではないのかもしれません。そのため長寿のお祝いとして赤いちゃんちゃんこを身に付けるというのは年寄り扱いされている気がして、あまり楽しくないと感じる方もかなりいらっしゃるようです。

一方で中にはやはり古くからの慣習通り赤いちゃんちゃんこや赤い頭巾、赤い座布団を身に付けたいと考えている人もいるかもしれません。
自分の父母がそうした形で祝いをしたという方や、少し年上のお知り合いの方が赤いちゃんちゃんこで祝ってもらったのを見て、自分もそうした形で祝ってもらうんだと考えている方もいらっしゃるでしょう。

プレゼント自体はサプライズで選ぶ可能性もありますが、祝いの席を設けるためには必ず本人に連絡をとります。
その際にきちんと赤い物を身に付けたいかどうかということを確認しておくと良いでしょう。
赤いちゃんちゃんこなど伝統的なものを身に付けたいのか、赤い現代的なものを身に付けたいのか、またそもそも赤いもの自体を身に付けたくないのかということを確認しておくと良いでしょう。
お祝いをする側も赤いちゃんちゃんこを贈るのが当然だと考えず、お祝いされる方の意思を確認するために、きちんと話し合いをしておくと良いでしょう。

3. 還暦の祝いはどこで行うか

還暦の祝いは単純に贈り物をするだけでなく、どこかで集まってお祝いをするのが一般的です。特別な誕生日だと考えると想像しやすいかもしれません。
一般的に還暦の祝いを想像すると自宅の床の間で親せきが集まって写真を撮っている情景が浮かぶ方が多いでしょう。
しかし最近ではホテルやレストランなどの場所を借りて還暦の祝いをされている方もいらっしゃいます。
ここではそれぞれの場所のメリットデメリットを解説していきます。

・自宅でお祝いをする場合

自宅で還暦のお祝いをするメリットは何よりもアットホームで会を開くことができる点です。料理などを自分で用意する場合、祝われる方が負担にならないよう、どう準備をするか考える必要があります。 場合によっては出前などのデリバリーを利用するのも良いかもしれません。他の人の迷惑にならないため、お孫さんなどが小さい場合でも安心してお祝いをすることができることも利点のひとつでしょう。 また服装などもそこまでこだわらなくても良いことも自宅で還暦祝いがオススメの理由のひとつです。

メリット

  • 慣れた場所でアットホームに行える
  • わざわざどこか知らない場所に集まってもらわなくてもいい
  • カジュアルに行える
  • 人数の調整が簡単
  • 料理などの料金だけで特別に費用がかからない

デメリット

  • 人数の確定をさせてあらかじめ予約しなければならない
  • 準備が面倒
 

レストランやホテルでお祝いする場合

自宅などの日常空間とは違った場所でお祝いできることは還暦を迎えた方も思い出深い会になるでしょう。また、レストランやホテルなど予約をとる段取りはしなければなりませんが、ある程度準備を施設側にお任せできるため、出席者や主宰者の負担が少ないという点でも非常に利便性が高いです。

当然そうした公共の場を借りるにあたって、ドレスコートや他のお客さんへの気遣いなどは必要になります。たとえば過剰に騒いでしまう可能性がある場合や小さなお子さんが多い場合などはあまりオススメできませんが還暦を迎えた方とそのお子さんだけなどでお祝いをする場合などは自宅で行うよりもレストランなどで会食をした方がいいかもしれません。

メリット

  • 日常空間とは違った場所で行うことでラグジュアリーなイベントを演出できる
  • 準備が楽

デメリット

  • 小さなお子さんなどが参加するのが難しい
  • 場所などの連絡が難しい
  • 費用が自宅と比べて割高になる可能性も

4. 還暦祝いの予算はいくらくらい?

還暦のお祝いの予算は、お祝いされる方との関係によって大きく平均金額に開きがあります。
以下は一般的に還暦祝いを行うときのプレゼントや会費などで支払う金額の総額です。

実父母や義父母の場合、 20000~50000円
叔父や叔母など親せきの場合、 5000~20000円
祖父母の場合、 5000~10000円
上司や恩師などの場合、 5000~10000円

還暦祝いをする場合にはたいていの場合、複数の方でお祝いすることが多いでしょう。そうした場合には、他の方の金額を確認することも大切です。
関係がより近い方よりも高額な贈り物をすると角が立つ可能性もありますので、あらかじめ参列する方にどれくらいの予算を考えているのか確認しておくと良いでしょう。またお祝いされる方との関係性などを考慮してプレゼント選びをする必要があります。

5. 還暦祝いのプレゼントを贈る際に注意すること

還暦の祝いは、年少者から年長者へプレゼントを贈る数少ない機会のひとつでもあります。日本では贈り物は単にものを渡すだけでなく、その裏側に気持ちや意味なども込めて贈ることが多いです。そのため、ゲンが悪いものを贈ると失礼に当たることもあります。

 

5-1. 絶対に贈ってはいけないもの

還暦の祝いで年長者の方に贈ってはいけないものとして、「老い」や「死」を感じさせるものがあります。杖や老眼鏡、補聴器など年配の方しか使用しないものを贈ることは長寿の祝いに贈るものとしてふさわしくないと考えられます。そのため、本人がそうしたものを欲していたとしても、それは還暦の祝い以外の形で贈るのが良いでしょう。
具体的には年配の方しか使わない「補聴器」や「老眼鏡」、苦や死という言葉を連想させる「櫛」などはあまり贈らない方が良いようです。

 

5-2. 伝統的に目上の人に贈らないもの

足に身に付けるものは目上の人に贈るものとしては相応しくないとされています。足に履くものは足で踏みつけるものであるため、相応しくないと考えられてきたからです。

また、筆記用具などの勉学や仕事の作業に直接関係するものもあまり相応しくないとされています。これらのものは、もっと勉学に励みましょうという意味や仕事を頑張ってくださいという意味が込められているため、普通年長者から年少者に贈るプレゼントだとされてきたからです。
ただ、まだまだ現役で仕事をしていてほしいという意味を込めて万年筆や腕時計など仕事に実用的なものを贈ることも最近では増えてきているようです。

最近では下着や靴、筆記用具や腕時計などをプレゼントしている方もいらっしゃいます。風習や縁起などを気にする人が還暦を迎える本人、そしてその周辺の方でいないというのであればそうしたものを贈るのも良いかもしれません。

6. 還暦祝いに贈って喜ばれるもの

還暦祝いに喜ばれるものとして記念品、嗜好品そして趣味の道具があります。また記念品の場合には、自分の還暦を皆で祝ってくれたという記念になるため、あとで見返してもうれしいものになるでしょう。

嗜好品や趣味の道具の場合には、これからももっと人生を楽しんでくださいという意味合いがあり、そして本人がもらってうれしいものであるため、還暦のプレゼントとして相応しいものになるのではないでしょうか。

贈り物には意味が込められています。還暦の祝いなどの場合、非常に親しい人に対してプレゼントを贈ることになります。
明らかに年寄り扱いするようなものの場合、話は別ですが、多くの物の場合プレゼントを貰って喜ばない人はいないでしょう。

6-1. 記念品などをあまり好まず趣味も分からないという場合には

何を贈っていいのか全く分からないという場合には、消え物を贈るのもいいかもしれません。
お酒やビールなどのアルコール類、肉などの食べ物も良いでしょう。縁起物として贈るのであれば、バームクーヘンなども良いかもしれません。

また、物ではないものをプレゼントするという方も多くなってきています。食事や旅行などを贈り、その費用をみんなの還暦祝いの中から出す、というものです。
物として、また記念品として形に残るものではありませんが、お世話になった方に記念の体験を贈るという形で還暦祝いとされている方も多いようです。

6-2. オススメの還暦祝い

赤いちゃんちゃんこや頭巾などでも喜んで着てくれるという場合や、趣味のものでぴったりのものがあるからそれを贈りたいという場合には還暦のお祝いの品で頭を悩ますことはないでしょう。
しかし、何を贈っていいかわからないけれど何か記念になり形として残るものを贈りたいという場合には次のようなものがオススメです。

●置時計

腕時計の場合、身に付けないといけないものであるため本人の趣味・嗜好などによってはなかなか身に付けてもらえないということもあります。しかし置時計の場合には自宅に置いておくものであるため、比較的気軽に使ってもらうことができます。
また、感謝のメッセージや似顔絵などを入れることによってより記念品らしい置時計を贈ることができます。

●ワインや日本酒などの瓶の飲み物

同じ消え物であっても、肉などの場合には食べてしまえばそのままなくなってしまいますが、ワインや日本酒などの場合にはたとえ中身を飲んでもその瓶だけ記念に取っておくことができます。
特にワインの場合にはもらったあと寝かしておくことによって味わいも変わり、より味わい深くなるものも多くあります。還暦祝いにもらったワインをそのまま取っておき、古稀や傘寿の記念として飲むというのもひとつの乙な楽しみ方ではないでしょうか。

●本人にちなんだ絵や寄せ書き・名入れの記念品

高価なものでなくてもその日のために用意してくれた記念品であれば喜んで受け取ってくれる人は多くいるはずです。
本人の似顔絵入りの絵や寄せ書きなどを贈ってみるのもひとつの方法かもしれません。またその他のものを贈る際に名入れのものを利用するとより記念品であることがわかり愛着を持って使ってもらうことができます。

7. 還暦祝いのマナー

7-1. 還暦祝いのプレゼントの熨斗紙はどれを選ぶ

還暦の祝い品は通常のプレゼントのようにプレゼント包装をして贈っても良いですが、熨斗(のし)を付けて贈ると更に良いでしょう。
長寿のお祝いというのは何度しても良いことなので、水引(真ん中で結ばれている紅白の紐)蝶結びのものを選びます。蝶結びはほどいてもまた同じように結び直せることから繰り返し行っても良いものに対して使います。結びきりの場合には解けないようにできているので反対に人生で一度だけだと良いことに対して使います。長寿のお祝いは何度もしてほしいものですので蝶結びのものを選びます。

また水引は10本だと結婚に関するお祝い、7本だと慶事、5本だと弔事を表すので長寿の祝いの際には7本のものを使います。

7-2. 還暦祝いに参加するときの服装

還暦祝いに祝う側として参加するときにこうだという服装は特別に決められていません。しかし、その場所に合わせた服装で行く必要があります。

例えば会場がホテルやレストランなどの外のフォーマルな場所で行われた場合にはその場所に合った服装をしていくようにします。
男性の場合にはスーツ、女性の場合にはワンピースやスカートスーツなど、結婚式の二次会のような服装が良いでしょう。

反対に自宅などで還暦祝いをする際にはあまりにフォーマルな服装で参加すると少し浮いてしまうかもしれません。

8. 還暦についての豆知識

8-1. 還暦以外の長寿のお祝い

還暦というのは生まれてから十干十二支が一周したことをお祝いするものです。
十干(10)と十二支(12)を掛け合わせて作るため全部で60の組み合わせがあります。そのため数えや満年齢で60歳になったことを記念してお祝いをします。

長寿の祝いは還暦だけではありません。60歳を過ぎてからのお祝いは10歳ごとに、また70歳を過ぎてからのゾロ目の歳にお祝いをします。ゾロ目の歳はもともと大凶の年であるとされていました。しかし、こうしたお祝いをすることによってその年を大吉の年にするというものです。
またお祝いする歳によって、テーマカラーが異なります。

60歳 還暦(かんれき) 十干十二支から来たお祝い現在では長寿というよりも区切りとしてお祝いすることが多い。赤を基調にしたお祝いをする。
70歳 古稀(こき) 中国の詩聖「杜甫」の詩の「人生七十年古来稀なり」というフレーズの古来稀なりから来たお祝い。紫を基調にしたお祝いをする。
77歳 喜寿(きじゅ) 喜という漢字を草書で書くと「七」と三つ書いたことから。古稀と同様に紫を基調にしたお祝いをする。
80歳 傘寿(さんじゅ) 傘という漢字を略字で書くと「?」と書いたことから。黄色を基調にしたお祝いをする。
88歳 米寿(べいじゅ) 米という漢字をばらばらにすると「八十八」となることから。黄色を基調にしたお祝いをする。
90歳 卒寿(そつじゅ) 卒という漢字を略字で書くと「卆」と書いたことから。紫を基調にしたお祝いをする。
99歳 白寿(はくじゅ) 百という漢字の一番上の横棒を取ると「白」という漢字になることから100-1=99、九十九のお祝い。白を基調にしたお祝いをする。
100歳 百寿(ひゃくじゅ) 別名紀寿とも。紀は長い時間を表す漢字であることから。百寿の場合は単純に百歳のお祝いであることから、ピンクを基調にしたお祝いをする。

これらのお祝いには様々な風習がありましたが、色以外で比較的贈り物に細かいルールがあるのは還暦のお祝いだけです。

どのお祝いでも共通項として縁起の悪いもの(4や9を含んだもの)や老いを連想させるもの(杖、老眼鏡などの高齢の方しか使わないもの)は贈らないというのがマナーになっています。

8-2. そもそも干支とは

日本人の生活に深く根付いている十二支。これは紀元前の中国で作られた思想です。日本人にとって最も知られている物語は、神様に「元旦の朝に、あいさつに来るように。一番目から十二番目に来たものを、その年の一番偉い動物にしてあげよう」と言われる、というものです。神様のところに元旦のあいさつに来た順に、ネズミ(子)、ウシ(丑)、トラ(寅)、ウサギ(卯)、リュウ(辰)、ヘビ(巳)、ウマ(午)、ヒツジ(未)、サル(申)、トリ(酉)、イヌ(戌)、イノシシ(亥)という順に干支に命じられたというものです。この話の枝話としては、ネコはいつ神様のところに行けばいいのか聞いておらず、ネズミに騙されて二日に神様のところにあいさつに行ってしまったというものがあります。このことからネコはネズミを恨み、見つけると追いかけるようになったという寓話です。
わたしたちの生活に密着した干支は12で割れるさまざまなものに使われました。暦以外の具体的な例としては方角や時刻があります。

8-3. 時刻を表す干支・方角を表す干支

時刻は古くから12の倍数で作られてきました。現在では午前・午後がそれぞれ12時間で表現されています。現在の24時間表記をかつては干支で表現していました。
24時間を干支の12で割ると2時間になります。深夜12時の前後1時間を「子の刻」、2時間後の午前2時の前後1時間を「丑の刻」、午前4時の前後1時間を「寅の刻」という風に表現していたのです。

江戸時代には庶民が個別で時計を持っていることはありませんでした。そのため、時刻を担当する城の役人や有名な寺院の僧侶が鐘をついて時刻を知らせていました。そうした係はお香を利用した時計や和時計などを用いて時間を計測していました。

怪談などでよく表現される「丑三つ時」というのは丑の刻(午前1時から午前3時)を4等分した3つ目、午前2時から2時30分くらいことを表現しています。「草木も眠る丑三つ時」というのは午前2時から2時30分のことです。今と違い明かりが少なかった江戸時代以前というのは午前2時というのは誰しもが眠っている時間とされたのです。

こうした干支による時刻の表現というのは現在にわたしたちの生活に深く結びついています。最もわたしたちが目にする例というのは「午」でしょう。
昼の12時のことを正午、それよりも前のことを午前、それよりも後のことを午後と言います。午は干支で数えると7番目です。ちょうど子の刻の反対にあたり、その真ん中の時刻のことを正に午ということで「正午」と表現しているのです。

また、方角を表現する際にも干支を使用していました。
干支と時計の関係は時計の文字盤を想像すると分かりやすいです。時計の12時の方向が「子の方角」、1時の方角が「丑の方角」という風に干支が割り振られたのです。この表現の場合、北は「子の方角」、東は「卯の方角」、南は「午の方角」、西は「酉の方角」になります。北東や南西などの八方位を表現する場合にはその方角をちょうど表現する干支がありません。そのため、二つの方角を続けて呼ぶことによってその方角を表現しました。北東の場合、ちょうど1時(丑の方角)と2時(寅の方角)の方角の間にあたるため、丑寅(うしとらの方角)と呼ばれました。北西の方角の場合、戌亥(いぬい)の方角です。 時刻や方角など、多くのものが干支を利用して表現されていたのです。

現在まで残っている方角に関する干支の表現として、南北を結ぶ線「子午線」というものがあります。これは「北」を表す「子」と「南」を表す「午」からつけられたものです。

そんな生活に密着して利用されていた干支ですが、これと対になっている十干というものがあります。十干とは五行説と陰陽論を組み合わせて作られたものです。

8-4. 五行説とは

五行説と聞くと難しいものに感じるかもしれませんが、これも干支と同様にわたしたち日本人の生活の中に結び付いています。現在のわたしたちの使っている曜日のうち、太陽を表す「日」と月を表す「月」を除いた、「火」「水」「木」「金」「土」が五行です。
五行説ではすべてのものは「木・火・土・金・水」の五つの要素でできていると考えられていました。すべての要素はこれらの5つの要素のどれかに所属しており、それぞれの要素が別の要素を生み出すことによって、世界が循環していると考えられたのです。
例えば「木」という要素は「水」によって成長します。一方で「火」によって破壊されます。このように「木・火・土・金・水」によってすべてのものが構成されていると考えられていました。

8-5. 五行説と陰陽を組み合わせた十干

「木・火・土・金・水」の五つの要素をそれぞれ「陽と陰」の二つに分けて10にしたものが十干です。十干の中では、陽のものを「え」と呼び、陰のものを「と」と呼びます。
「五行の要素」+「の」+「え・と」でできたものが十干です。
十干は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類です。

甲 コウ きのえ 木の陽
乙 オツ きのと 木の陰
丙 ヘイ ひのえ 火の陽
丁 テイ ひのと 火の陰
戊 ボ つちのえ 土の陽
己 キ つちのと 土の陰
庚 コウ かのえ 金の陽
辛 シン かのと 金の陰
壬 ジン みずのえ 水の陽
癸 キ みずのと 水の陰

十干という表現も、同様に以前の日本では日常的に使われたものでした。例えば「甲乙つけがたい」というがあります。これはどちらを1位(甲)にそしてどちらを2位(乙)にするのか決めるのが難しいという意味です。

8-6. 干支と十干を組み合わせて暦に利用する

十二支十干とはこれらの干支と十干を組み合わせて60の組み合わせを作ったものです。

十干である、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
干支である、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥

これらを上下に組み合わせます。
甲子、乙丑、丙寅、丁卯、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申、癸酉、…

当然先に10種類である十干の方が先に一周するため、二周目の甲は干支とずれるため「甲戌」、「乙亥」と一周目とは異なる干支との組み合わせになります。

10と12の組み合わせになるため、その最小公倍数である60通りの組み合わせが発生します。もちろん単純な掛け合わせではないため発生しない組み合わせもあります。
子の場合は組み合わせになるものは「え」の十干である甲(きのえ)・丙(ひのえ)・戊(つちのえ)・庚(かのえ)・壬(みずのえ)だけになります。乙子などの組み合わせは存在しません。

これらの十二支十干の組み合わせというのは、年、月、日にそれぞれ割り振られます。
こうした十二支十干というものは、以前は非常によく使われたものでした。

最も有名なものとして、甲子園があります。甲子園が開場したのは前々回の甲子の年、1924年です。そのため甲子園という名がつけられました。
甲子の年は60年に一度しかやってきません。前回の甲子の年は1984年、次の甲子の年は2044年です。

また歴史的な出来事にも多くこうした十干十二支の名前が付けられています。
壬申の乱 672年
甲申事変 1884年
戊辰戦争 1868年
甲午農民戦争 1894年
辛亥革命 1911年

これらの名前というのはそれぞれの年の十干十二支から付けられたものです。

8-7. 年間出生率を大きく減少させた十干十二支

わたしたちの生活に大きな影響を及ぼした年に対する干支の暦として丙午(ひのえうま)があります。

江戸時代に発生した迷信として「ひのえうま年生まれの女性は気性が激しく、夫の命を縮める」というものがありました。20世紀以降に訪れたのは1906年、そして1966年です。次に巡ってくるひのえうまの年は2026年です。 こうした迷信を信じる方が多かったことから、1906年の出生率は前年比で1.6%減少しています。またよりその傾向が顕著となった1966年のひのえうまの年は前年比で4.9%人口が減少しています。

こうした暦に関する考え方というものは古くから日本の中で伝わってきたものです。起源を中国としているものの、日本の中で長く生活や文化の中に取り入れられ、そして成熟してきたものです。

慶事や弔辞などのマナーは多くの文化から作られてきたものです。先祖から伝わってきたものとしてこれからも伝えていくものではないでしょうか。
特に慶事という喜ばしいことを祝うという習慣は、よりたくさん続けていくべきではないでしょうか。

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店長日記

はじめまして!店長の戸田です。
このサイトは、当社のデザイナーが直接創作、運営するサイトです。
還暦祝いなどの家族間のプレゼントに子供の絵から作るアート作品、思い出の写真でオリジナル時計など、様々なアートグッズを制作しております。「お客様の声に直に触れ、心のかよったアート創りをめざしております。
ぜひ当サイトをご利用ください。お待ちしてます!!
店長日記はこちら >>

今年も当店が担当しました文部化学省公募の科学技術白書表紙絵デザインコンクールの記念品に、写真時計がえらばれました。

コンクールの記念品

表紙デザインの原画を「そのままプリント」で制作しました。
きっと記念の賞品としてもらった子供達は大喜びしてることでしょう。

P150掲載中 当店が紹介されました!

先日、大阪NHKテレビの美人キャスターが取材に来られました。またFM群馬の番組パーソナリティにも取材され、当店の商品を大きく取り上げていただきました。世界でひとつのオリジナルギフト品(ピカソ子供アート、メッセージ油絵、Tシャツ、エプロン、オリジナル時計etc)をアピールさせていただきました。
4月14日発行「週刊女性セブン」て12ページにわたって組まれた特集記事「今日からできる親孝行」で当店のピカソ子供アートや、子供の絵や名前をアート加工したTシャツ、エプロンなどが紹介されました。

スタッフ紹介

  • WEBショップ店長 デザイナー 戸田 大介

    お客様との出逢いを大切に一人一人に「満足」していただけるよう努力しております。店長として、お客様のご要望を大切に、そのお祝いの会を想像しながら感謝の気持ちのつまった贈り物を提案していきたいと思っています。何を贈るか、贈り物に迷ったときは是非私にご相談ください。

  • WEB・似顔絵デザイナー さくら.TO

    当ピカソランドの業務全般を把握するスーパーウーマンを目指しています。似顔絵・デザイン・経理・お客様担当等々。6歳の子育て真っ最中。

  • 似顔絵 YUKO.I

    似顔絵を担当。そっくりに、美人に、かっこよくお客様がいつも見ておられる「あの方のあの笑顔」に少しでも近づけられるよう頑張ります。

  • 似顔絵 auto

    似顔絵を担当。「お客様を笑顔にする」を目標に日々製作に取り組んでいます。趣味は釣りと生き物のイラスト製作。生粋の生物好き。

  • WEB・似顔絵デザイナー Nana.O

    似顔絵を担当。少し若く、すこし美人に、もちろん笑顔に描いています。長所・短所のデフォルメはせずにお客様に喜ばれる似顔絵を目指します。

  • ベテランデザイナー Hiroko.O

    クライアントの無理難題を、そのパワーと経験で超スピード対応。お客様とのパートナーシップを大切に仕事に精進しております。

  • ベテランデザイナー 代表 戸田 博

    デザイナー歴50年以上。第一線からは少し距離を置きながらもWEB広告、SEOなどマーケティングを中心に奮闘中。

外部スタッフ

  • 名前の詩ライター Akiko 伊串

    出産を機に、出版業界からウェブに転身したライター。お客様のお祝いに参加でき嬉しいです。人生のいっぱい詰まったポエム、目指してます!
    趣味は読書とオペラ。

コラム


2021.1.13
最近では平均寿命も長くなり、還暦の祝いで赤いちゃんちゃんこを身に付けるのが嫌だという方も多くいらっしゃいます。しかし、送り手としては何か記念になるものを贈ってねぎらいたいもの。そんなときにおすすめなのがメッセージ付きの似顔絵ギフト。通常の似顔絵ギフトとは違い、ピカソランドでは修正が可能。送り主様の意向に合った似顔絵ギフトを作成することができます。
2020.12.23
現在の日本の社会では人生100年と言われています。昔とは違い60歳の還暦の祝いというのはそこまでの頑張りを祝う意味合いよりも、これからまだまだ頑張っていってほしいという意味合いが強いようです。そんな還暦のお祝いに時を刻む時計はいかがでしょうか。ピカソランドでは似顔絵入りの時計の作成を行っております。還暦のお祝いにオリジナルのメッセージ入り時計はいかがでしょうか。
2020.12.17
還暦の祝いとなると何を送っていいのかわからないということもあるでしょう。もともと縁起物であるため、記念となる品であるうえ、縁起のいいものでなければなりません。そんなときにおすすめなのが、本人の似顔絵入りの記念品です。記念になるうえ、その後お部屋のインテリアとしても長く利用することができます。ピカソランドでは似顔絵入りのさまざまな記念品をご用意。世界にひとつだけの記念品を人生の節目にお送りしてはいかがでしょうか。
2020.12.9
ピカソランドでは似顔絵の入り記念品を提供しています。似顔絵時計のほか、名前の詩、お酒のラベルなどさまざまな形で記念品をご提供させていただいております。ご注文は当ホームページからでも、またお電話・FAXでも承っております。お気軽にお問合せください。
2020.12.2
ピカソランドでは還暦のお祝い用の似顔絵入り時計を販売しております。ピカソランドではデジタル絵筆を採用しています。通常の手書きの似顔絵では、完成した商品を修正することができません。しかしデジタルの場合には完成したあとの作品を見て修正することができるため、満足のいく作品を作り上げることができます。
2020.11.26
還暦とは中国や日本で用いられている古い暦の十干十二支が一周したことを祝うことです。暦が還ることから赤ちゃんと同じように赤い衣服を身に着けてお祝いをします。そんな大切な記念に世界にひとつしかないオリジナルのプレゼントはいかがでしょうか。

 

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